婦人衣料・スポーツ衣料・産業資材などの捺染|大本染工株式会社 様

紙とFAXによるアナログな情報共有からデータ・AI活用への業務革新 大本染工がPRISMで進める、繊維業界の共創型DX

紙とFAXによるアナログな情報共有からデータ・AI活用への業務革新 大本染工がPRISMで進める、繊維業界の共創型DX

京都で50年にわたり染色整理業を営む大本染工株式会社。
同社は、アパレル向けのプリント生地を中心に、多品種小ロットの染色加工を手がけてきました。
素材や温湿度、加工条件によって仕上がりが変わる染色の現場では、長年、職人の経験や紙・FAXを前提とした業務運用が支えてきた一方で、情報共有や知見の蓄積には課題もありました。
そうした中で同社が導入したのが、Thingsの図面・文書管理システム「PRISM」です。
単なる帳票管理のデジタル化ではなく、社内外の情報をつなぎ、将来的なAI活用まで見据えた基盤づくりとして活用が進んでいます。
今回は、大本染工株式会社 代表取締役社長の濱野公達氏、デジタルプリント事業部 部長 兼 デジタル推進室 室長の宮本尚泰氏、営業事務の松原知子氏に、導入前の課題や活用の変化、今後の展望について伺いました。

紙とFAXを前提にした運用では、情報がたまらず、つながらない

まず、御社の事業内容と、特徴について教えてください。

濱野氏:
当社は染色整理業の中でも、無地染めではなく、柄を生地にプリントする加工を中心に手がけています。たとえば、ワンピースの花柄やストライプ、水玉模様など、洋装向けのプリント生地が主な領域です。
創業当初は手作業に近い型染めから始まり、その後、機械化、さらにインクジェットによるデジタルプリントへと進化してきました。ただ、当社は大量生産型ではなく、多品種小ロットに強みを持っています。いろいろな設備を組み合わせながら、案件ごとに異なる条件に対応していくのが特徴です。
一方で、この業界はそもそも扱う素材が安定しません。綿やシルク、ウールのような天然素材は、同じように見えてもロットごとに微妙に違いますし、温湿度によっても仕上がりが変わります。そういう意味では、現場の仕事はかなり職人的です。どこに注意するべきか、今回の生地にはどう対応するべきかは、経験値がものをいう部分が多いですね。

PRISM導入前は、どのような課題がありましたか。

松原氏:
導入前は、各種伝票や指示書をほぼ紙で管理していました。お客さまからのオーダーも、社内で処理した情報も、最終的には紙を追いかける形になっていたので、過去の情報を探すのがとにかく大変でした。
たとえば、生地を100メートルで入荷しても、加工工程を経て、出荷時の長さは異なっている場合があります。加工前・加工後の数量差を確認するには、まず入荷時の伝票を探す必要があります。しかし実際には、入荷時期が曖昧なまま、取引先ごとに保管された紙伝票を一枚ずつめくって確認することで、時間をかけての伝票確認作業が発生する場面も多くありました。

宮本氏:
帳票のフォーマットも取引先ごとに異なるため、PC上で一覧管理をしていても、元データは紙で保管されているケースが多くありました。結局、確認のたびに紙の伝票へ戻る必要があり、検索性や共有のしやすさには限界がありました。

濱野氏:
この業界は、知見をデータとして蓄積しにくい構造があります。紙で残していても検索はできませんし、色や風合いのように現物がなければ判断しづらい情報も多いため、判断材料が職人や担当者個人の頭の中に蓄積されやすくなります。
現場だけでなく、事務所側の判断も含めて、経験値に頼っている部分は少なくなかったと思います。

FAXでの運用も多かったと伺いました。

濱野氏:
そうですね。社外とのやり取りは、かなりFAXが中心でした。ただ、FAXは単に古い手段というわけではなく、現場にとっては便利な面も多くあります。個人ではなく会社や部署宛てに届くため、その場で振り分けたり、紙に書き込みを加えたりしやすく、アナログならではの柔軟さがありました。
一方で、そうした便利さがある反面、過去の情報を探しにくい、記録として蓄積しにくい、共有しづらいといった課題もありました。そのため、当社にとっての課題は単に社内の情報整備にとどまらず、得意先や仕入れ先と、どうデータを共有していくかという点にも広がっていました。

自社の業務に合う形で、PRISMを導入

そうした課題に対して、PRISM導入を決めた理由は何だったのでしょうか。

濱野氏:
きっかけは、2020年ごろに展示会へ足を運んだことでした。そこで、想像していた以上に世の中のデジタル化が進んでいることを実感させられたのです。
自社を振り返ると、やり取りはFAXが中心で紙での保管も多く、このままでは厳しいという危機感がありました。ちょうどコロナ禍でもあり、今後の変化に備える意味でも、本格的にデジタル化へ取り組む必要があると考えました。
まずは基幹システムや生産管理、販売管理の整備を進めましたが、その次の課題として残ったのが、社外とのデータ共有でした。API連携のような方法も検討しましたが、取引先ごとにITリテラシーや投資に対する温度感が異なるため、現実的ではありませんでした。
そうした中で、ノーコードで柔軟に設定をカスタマイズできるPRISMであれば、自社の業務に合わせた運用ができるのではないかと感じたのです。

宮本氏:
最初から完成されたシステムをそのまま導入する、という感覚ではありませんでした。むしろ、自分たちの業務に合わせてどう活用できるかを話し合いながら、一緒に形にしていった印象に近いですね。

他のサービスとも比較されたのでしょうか。

宮本氏:
比較をしました。ただ、機能面だけでなく、Thingsさん、PRISMがどこまで寄り添ってくれるのかも大きな判断材料でした。

濱野氏:
外資系企業等の規模の大きなプロダクトは確かに便利ですが、自社の細かな業務や要望に合わせて一緒に考えてもらえるかというと、難しい面もあります。その点、Thingsさん、PRISMには「一緒により良いものをつくっていこう」という姿勢を感じられたことが大きかったですね。

導入後、どのような変化がありましたか。

松原氏:
最も大きいのは、検索が圧倒的に速くなったことです。以前は紙の伝票を探し、必要であればFAXを送るという流れでしたが、今は生地番などで検索すれば、必要な情報にすぐたどり着けます。もともと事務職なのでPCの前にいる時間は長いのですが、それでも「PCの前から動かなくて済むようになった」と改めて感じるほど変化は大きいです。

宮本氏:
問い合わせ対応もかなり変わりました。以前は、いったん電話を切って調べたうえで折り返すことも多かったのですが、今はその場で検索しながら確認できます。また、取引先ともデータを共有しているため、「あの書類が見当たらない」といった問い合わせそのものも減ってきました。

濱野氏:
紙を探すための仕事から、情報を活用する仕事へと、少しずつ変わってきた感覚があります。特に大きいのは、情報が一か所に集まり、誰が見ても同じ結果にたどり着けるようになったことです。属人的だった部分が減りつつあります。
たとえば納期一つ取っても、以前は営業担当しか答えられなかったものが、今は必要な情報さえあれば誰でも確認しやすくなってきています。

Thingsのサポート体制についてはいかがでしたか。

宮本氏:
レスポンスが非常に早いですね。優先順位を明確にしながら、「これはすぐ対応します」「これは少し後になります」とはっきり伝えていただけるので、こちらとしても進めやすいです。

松原氏:
毎日使っていますが、画面・機能が少し変わったなと気づくことがよくあります。細かな改善のスピードが早いと感じています。

濱野氏:
こちらのアイデアや要望も、きちんと面白がって受け止めてくれるのがありがたいですね。単にシステムを導入して終わりではなく、業務に合わせて一緒に進化させていく感覚があります。

データを蓄積し、本当に残すべき職人技を際立たせる

今後、PRISMをどのように活用していきたいですか。

濱野氏:
一番大きいのは、AI活用に向けた準備ですね。今、世の中ではAIが注目されていますが、実際にどのように進化していくのかは、まだ誰にも分からないと思います。ただ、一つ確かなのは、データがなければ何も始まらないということです。
その意味で、PRISMは紙の情報もデータとして蓄積していける。今はまず、基幹システムとPRISMの両方で、情報をためていく段階だと考えています。将来的には、過去の履歴をもとに「この素材ではここに注意した方がよい」「過去にこうした失敗があった」といったことを、AIが自然に返してくれるようになるかもしれません。

宮本氏:
今でも過去の伝票や履歴を見て参考にすることはありますが、それをうまく検索して活用できるのは、どうしても経験のある人に限られます。そこを、誰でも使える形にしていけると大きいですね。

一方で、すべてをデジタル化するわけではないというお考えもあるそうですね。

濱野氏:
そうですね。すべてをデジタルに置き換えたいわけではありません。
アナログの方が適している部分もありますし、現場でも「ここは紙の方が良い」という声はあります。ただ、だからといって、何でも職人技として片づけてしまうのも違うと思っています。
本来は、データ化できるものは徹底してデータ化し、そのうえで最後に残るものこそが、本当の意味での職人技だと思います。デジタル化が進むほど、本物の技術や感覚がむしろ明確になってくるというように考えてます。

さらに、御社だけでなく繊維業界全体への広がりも見据えていると伺いました。

濱野氏:
はい。これは自社の効率化だけで終わる話ではないと思っています。
繊維業界は、小さな事業者の集積で成り立っており、情報が分断されやすい構造です。だからこそ、すべてを一つの大企業に集約するのではなく、それぞれの会社の個性を残しながら、共有できる部分はデータでゆるやかにつながるような仕組みが必要だと考えています。
その意味では、今自社で積み上げている運用やノウハウを、将来的には業界向けの型として展開していくことも視野に入れています。染色業向け、生地業向け、裁断業向けなど、それぞれの現場に合った形で使えるテンプレートのようなものができれば、同じ課題を抱える会社にも役立つはずです。

宮本氏:
今の設定も、同じ業態の会社であれば活用できる部分は多いと思います。もちろん細かな違いはありますが、土台としてはかなり応用が利くのではないでしょうか。

松原氏:
自社の中で便利になるだけでなく、同じように困っている会社にも広がっていくといいなと思います。

最後に、今後PRISMを活用して実現していきたいことを教えてください。

濱野氏:
今はまだ、ようやく土台づくりが始まった段階だと捉えています。紙で持っていた情報をきちんと残し、後から使える形にしていくことが、これから先のAI活用による業務改善や新しい取り組みにつながっていくと思っています。
すぐに何かが大きく変わるというよりも、こうしてデータを蓄積していくこと自体に意味があると感じています。その積み重ねの先に、現場で培ってきた知見をより活かせる形が見えてくるはずです。また、私たちの取り組みの成果は会社の中だけでなく、繊維業界全体にとっても価値のあるものにしていけたらと考えています。その基盤として、PRISMにはこれからも期待しています。

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