産業用の特殊車両を、一台一台オーダーメイドで設計・製造するF.B.Bison。
自動車部品工場や木材工場、鉄道関連施設など、現場ごとに異なる搬送ニーズに対応するため、同社の製品はほぼすべてが個別設計となる。
そのため、事業の根幹となるのが「図面」だ。設計、部品調達、製造、保守においてすべての工程の起点となる重要な資産でもある。
同社では長年、オンプレミス型の図面管理システムを利用してきた。紙だけに頼らず早くから図面データを管理できた点は、導入当初こそ先進的だったものの、図面データが蓄積されるにつれ、検索性の面で徐々に限界が見え始めていたという。
一方で、設計や調達の現場では、過去図面を参照する機会が年々増えていた。類似製品を設計する際や、過去に使用した部品や発注先を確認する際など、図面を素早く検索・確認できる環境の重要性は高まっていた。
システムの扱いにくさから膨大な図面データを十分に活用できない状況が続いていたため移行の必要性は感じながらも、データ量の多さや移行方法の複雑さから、新しいシステムへの移行は長く実現できずにいた。
こうした状況を背景に導入されたのが、Thingsの図面・文書管理システム「PRISM」だ。単なるシステムの置き換えではなく、将来のAIデータ活用まで見据えた図面・文書管理の基盤づくりが始まっている。
今回は、F.B.Bison 取締役 福本皓介氏に、導入前の課題、導入の決め手、導入後の変化、そして今後の展望について伺った。
一台ずつ設計するからこそ、図面が会社の資産になる
まず、御社の事業内容や主力の製品について教えてください。
福本氏:
当社は産業用の特殊車両を製造しています。自動車部品工場で金型を運ぶ車両や、長い木材を運ぶ車両、鉄道設備を牽引する車両など、一般的なフォークリフトでは対応できない搬送用途の車両を設計・製造しています。
基本的にすべてオーダーメイドです。仕様が少し変わるだけでも図面は別物になりますから、一台ごとに図面を起こします。似た製品はあっても、完全に同じものはほとんどありません。そのため図面の数は非常に多くなります。
案件ごとに図面が蓄積されていくため、長年の事業の中で図面データは膨大な量になっています。その一つひとつが過去の製品の履歴でもあり、会社にとって重要な技術資産です。

設計から製造までの流れの中で、図面はどのような役割を担っているのでしょうか。
福本氏:
図面は単なる設計資料ではありません。設計だけでなく、部品調達や製造にも直結しています。設計図面をもとに協力工場へ部品を発注し、鋼材加工や溶接、塗装などを経て部品が完成します。それを社内で組み立てて最終的な車両になります。
つまり図面は、製造プロセス全体の起点です。さらに重要なのは、図面が過去の製造履歴でもあるということです。どんな仕様で、どんな部品を使い、どこに発注したのか。その情報がすべて図面に残っています。
当社の場合、こうして蓄積されてきた図面は15万〜20万点ほどにのぼります。
そういう意味では、図面データは会社のノウハウそのものですね。これまで蓄積してきた技術や製造の知見が、図面という形で会社の中に残っているとも言えます。
長年使ってきた図面管理システムの限界
PRISM導入前はどのように図面を管理していたのでしょうか。
福本氏:
以前から図面管理システムは導入していました。図面をスキャンしてファイルとして保存し、図番と紐付けて管理するという仕組みです。紙の図面だけで管理するよりは効率的でしたし、当時としては十分に役立っていました。
ただ、長年使っているうちに課題も見えてきました。特に感じていたのは、操作性や検索性の部分です。図面の内容を確認するまでに何段階もの操作が必要で、図面を探したり開いたりするのに時間がかかることもありました。
また、図面ファイルの形式や保存方法が過去の運用に依存している部分もあり、データとして活用するという観点では難しさも感じていました。

新しいシステムへの移行は検討されていたのでしょうか。
福本氏:
はい。実はかなり前から検討はしていました。
ただ、一番の問題は過去図面データの移行でした。サーバーには膨大な図面データが蓄積されていましたが、その多くが整理された状態ではありませんでした。
TIF形式のファイルだったり、ファイル名だけでは内容が分からないものもありました。それらをすべて正しく図番と紐付けて新しいシステムへ移行するのは非常に難しく、過去にも移行を試みて断念したことがありました。
そのため「移行したいけれどできない」という状態が長く続いていました。
PRISM導入の決め手
PRISM導入の決め手は何だったのでしょうか。
福本氏:
システムに不慣れな人でも直感的に扱える簡単さと、過去図面データを安全に移行できるサポート体制の2点ですね。図面は会社の資産なので、一部でも欠けてしまうと困ります。そのため、移行の安全性は最も重要なポイントでした。
PRISM導入では、膨大な既存データを整理しながら移行してもらえたので、「移行したかったけれどできなかった」という状況を解決することができました。
結果として、これまで蓄積してきた図面資産を維持したまま、新しい環境へ移行できたことは非常に大きかったと思います。
導入後に感じた業務の変化
導入後、どのような変化がありましたか。
福本氏:
一番大きいのは、図面を探しやすくなったことですね。

旧システムでも図番検索はできましたが、PRISMではプレビューで図面を確認しながら探すことができます。一覧で図面を見ながら判断できるので、探すまでの時間がかなり短くなりました。
設計でも調達でも過去図面を参照することが多いので、この違いは大きいと思います。
以前は図面を探すために複数のフォルダや画面を行き来することもありましたが、現在は一覧性が高くなり、目的の図面にたどり着くまでの流れがスムーズになりました。
結果として、図面確認にかかる工数が削減され、設計や調達の業務効率も改善されていると感じています。

PRISM導入を支えた伴走サポート
導入や運用の中で、Thingsのサポートについて感じたことはありますか。
福本氏:
対応のスピードはかなり早いと感じています。実際に運用していると、ここをもう少しこうしたいという細かな要望がどうしても出てくるのですが、その相談がしやすいですね。
こちらの業務の背景も理解したうえで話を聞いてくれるので、単に「できる・できない」という話ではなく、「どうすれば現場で使いやすくなるか」という観点で一緒に考えてもらえている感覚があります。
導入して終わりではなく、実際の業務に合わせて改善を重ねていける点は非常に助かっています。現場で毎日使うシステムだからこそ、こうしたレスポンスの速さやコミュニケーションの取りやすさは大きいと思います。
AI活用と業務の仕組み化
今後、PRISMをどのように活用していきたいですか。
福本氏:
図面データをもっと活用していきたいですね。図面の形状や寸法、材質などから類似図面を提示してくれる機能についても、今後活用することで設計や調達の効率はかなり上がると思います。
ただ、そのためにもまずデータが必要です。AI活用の前提は、整理されたデータの蓄積だと思っています。図面をきちんとデータとして蓄積し、検索できる状態を整えていくことが、将来的なデータ活用の基盤になると考えています。
一方で、製造業として残していきたい部分もあります。例えば、職人の経験や感覚から生まれる判断や工夫のようなものは、簡単にデータ化できるものではありませんし、そうしたスキルはむしろ会社の強みとして残していくべきものだと思っています。
製造業の技術として属人化する部分は残しつつ、AIやデジタルで解決できる部分は仕組みにしていくような形でバランスよく進めていくことが大事だと思っています。
PRISMのような仕組みがあることで、図面や過去の製造履歴をデータとして蓄積できるようになります。
長期的には、こうしたデータが設計や調達の判断を支えたり、経営判断や事業改善の材料にもなっていくのではないかと期待しています。
