部品表(BOM)の作り方|品番体系の設計と整備方法について

部品表(BOM)を新しく作ろうとして、「まず何から手をつければいいのか」で止まってしまう。

これは、はじめてBOM構築を任された担当者が必ずといっていいほど直面する壁です。ネット上には「ストラクチャ型」「サマリ型」といった分類の解説は多いものの、実際に手を動かす際に最初に決めるべきことは、あまり語られていません。

結論を先に言えば、部品表づくりでつまずく最大の原因は、部品表の「形」から考え始めてしまうことにあります。本当に先に決めるべきなのは、一つひとつの部品をどう識別するか、つまり品番体系(採番ルール)です。ここが定まっていないと、あとから何をどう組んでも整合が取れなくなります。

本記事では、部品表の作り方を「品番設計 → 階層設計 → 属性設計 → データ移行」という4つのステップに分解し、実務でそのまま使える判断基準とともに解説します。Excelで作り始める場合にも、システム導入を見据える場合にも共通する土台の考え方です。

結論:部品表づくりは「品番→階層→属性→移行」の4ステップ

部品表の構築は、次の順序で進めるのが確実です。順番が重要で、上流の設計を飛ばして下流に進むと、必ず手戻りが発生します

ステップ 決めること 飛ばすとどうなるか
①品番体系の設計 部品を識別する番号の付け方(採番ルール) 同じ部品に複数の番号がつき、重複・混乱の温床になる
②階層構造の設計 製品→ユニット→部品をどう分けるか 構成が読み解けず、影響範囲の把握や集計ができない
③属性項目の設計 各部品に持たせる情報(員数・単位・代替品など) 調達や製造に必要な情報が足りず、都度問い合わせが発生
④データ移行・整備 既存Excel等からの移行とクレンジング 誤った古いデータがそのまま引き継がれる

以下、それぞれのステップを具体的に見ていきます。なお、部品表そのものの定義や種類(E-BOM・M-BOMなど)については、別記事で解説していますので、基礎から確認したい方はそちらもあわせてご覧ください。

【BOM とは】部品表の種類(E-BOM/M-BOM)や役割/管理方法を解説

ステップ1:品番体系(採番ルール)を設計する

部品表づくりの出発点は、部品を一意に識別するための番号=品番(部番)のルールを決めることです。品番は部品表の背骨であり、ここが曖昧だと以降のすべてが崩れます。

採番ルールには、大きく2つの考え方があります。品番そのものに意味を持たせる「意味あり品番(有意コード)」と、単なる連番を振る「無意味連番(シーケンシャル)」です。

観点 意味あり品番(有意コード) 無意味連番(シーケンシャル)
MB-SUS-0102(材質・種別が読める) P0001023(順番のみ)
メリット 番号を見ただけで種類が分かる 桁あふれや分類変更に強く、運用が単純
デメリット 分類変更や例外に弱く、桁が枯渇しやすい 番号から中身が分からず、属性情報に依存
向く企業 品目分類が安定している 品目数が多く、分類が流動的

例に挙げた2つの品番を分解すると、両者の思想の違いがはっきりします。

意味あり品番の MB-SUS-0102 は、番号そのものが部品の情報を語るように設計されています。たとえば次のような区切りです。

区切り 意味 例の値
先頭2桁 部品種別(機械部品/電装部品 など) MB=機械部品(Machine部品)
中央3桁 材質・分類 SUS=ステンレス
末尾4桁 種別内の連番・仕様違い 0102=102番目

このように読めば、MB-SUS-0102 は「機械部品/ステンレス/102番」と、番号を見ただけで概要がつかめます。図面や現物に番号が振ってあれば、担当者が台帳を引かずに部品の見当をつけられるのが最大の利点です。

一方の無意味連番 P0001023 は、P が品目を表す接頭辞、続く 0001023 は単なる登録順の通し番号で、それ以上の意味を持ちません。番号からは材質も種別も読み取れず、中身を知るには必ず属性情報(後述のマスタ)を参照します。

この2例は、そのまま両方式の弱点も表しています。

意味あり品番は、たとえば新しい材質「チタン」を扱い始めると、中央3桁に新コード(例:TI)を追加するルール改定が必要になり、材質が想定以上に増えれば桁そのものが足りなくなります。分類の途中変更が、過去の全品番の体系に波及しかねないわけです。
対して無意味連番は、どれだけ品目が増えても番号を1つ発番するだけで済み、分類が変わっても番号体系そのものは揺らぎません。その代わり、番号単体では何も分からないため、属性情報の整備が前提になります。

かつては意味あり品番が主流でしたが、品目数の増加や分類の変化に対応しづらいため、近年は「無意味連番+属性情報で管理する」方式が推奨される傾向にあります。番号に情報を詰め込む代わりに、材質・種別といった情報は後述する属性項目として持たせる考え方です。

いずれを選ぶにせよ、「誰が・いつ・どの単位で採番するか」という運用ルールまで決めておくことが肝心です。ルールがないまま各担当者が思い思いに番号を振ると、同じ部品に別番号が付く「重複品番」や、実体のない「幽霊品番」が生まれ、部品表全体の信頼性が失われます。

似たような品番が全く違う製品であることも多い

ステップ2:階層構造を設計する

品番が決まったら、次は製品がどのような構成で成り立つかを階層で表現します。一般には「完成品 → ユニット(中間品) → 部品」という親子関係で組み上げますが、ここで問われるのが「どこで階層を切るか」です。

階層を細かく切りすぎると管理が煩雑になり、粗すぎると設計変更や集計の単位として使えなくなります。判断の目安は、「その単位で在庫を持つか」「その単位で調達・製造するか」「その単位で設計変更が発生するか」です。いずれかに当てはまるなら、独立した階層(中間品)として切り出す価値があります。

階層設計で迷いやすいのが、次の2つの扱いです。

第一に、中間品(サブアッセンブリ)です。複数部品をまとめて一つの単位として扱うもので、それ自体を在庫・製造・調達する場合は品番を付けて階層化します。第二に、ファントム(仮想部品)です。設計上はまとまりとして扱いたいが、実際には在庫を持たず素通りする中間品を指します。ファントムを使うと、設計の見通しを保ちながら、製造・在庫上は不要な階層を省けます。

これらの判断は、後工程であるM-BOM(製造部品表)への展開しやすさにも影響します。設計視点のE-BOMと製造視点のM-BOMで階層の切り方が変わる点は、別記事「E-BOMとM-BOMって何が違うの?」で詳しく扱っています。

E-BOMとM-BOMって何が違うの?

ステップ3:属性項目を設計する

階層が定まったら、各部品にどのような情報(属性)を持たせるかを決めます。属性設計を疎かにすると、「部品表はあるのに、調達や製造に必要な情報が載っていない」という事態になり、結局は個別の問い合わせが発生します。

最低限そろえておきたい属性は、次のとおりです。

属性 内容 決めておくべきルール
員数 親に対して何個使うか 単位あたりか、製品あたりか
単位 個・m・kg・式 など 単位の表記統一(例:「個」と「ケ」を混在させない)
品名・仕様 部品の名称と仕様 命名規則(略称・全角半角の統一)
材質・種別 分類に使う情報 マスタ化して選択式にする
代替品 使用可能な代わりの部品 代替可否の条件を明記
調達区分 内製・購入・支給 の別 区分の定義をそろえる

属性設計のポイントは、自由入力を減らし、できる限り選択式(マスタ参照)にすることです。品名や材質を担当者が自由に打ち込むと、表記ゆれ(全角・半角、略称の違い)が生まれ、検索や集計ができなくなります。あらかじめ品目マスタ・属性マスタを整備し、そこから選ぶ運用にすると、データの品質が保たれます。

とくにオプション構成や仕様違いが多い製品では、バリエーションをどう表現するかを先に決めておくと、品番の乱立を防げます。
仕様ごとに別品番を起こすのか、共通品番に属性で差をつけるのかこの方針が定まっていないと、似た部品が無数に増えていきます。

ステップ4:既存Excelから移行し、データを整備する

多くの現場では、部品表はすでにExcelなどで存在しています。ゼロから作るというより、散在する既存データを整理し、統一ルールに載せ替えるのが実際の作業です。ここで品質を左右するのが、移行前のデータクレンジングです。

移行は、おおむね次の手順で進めます。

  1. 棚卸し:どこに、どの部品表が、いくつ存在するかを洗い出す
  2. 名寄せ:同じ部品が別名・別番号で登録されていないかを突き合わせ、統合する
  3. ルール適用:ステップ1〜3で決めた品番・階層・属性のルールに沿って整形する
  4. 検証:員数の合計や構成の整合を確認し、誤りを修正する
  5. 移行:整えたデータを新しい部品表(またはシステム)へ登録する

この中で最も手間がかかり、かつ最も重要なのが名寄せです。長年の運用で、同じ部品が「M8ボルト」「ボルトM8」「M8×20」など複数の名称・番号で登録されているケースは珍しくありません。これを放置したまま移行すると、重複や集計ミスがそのまま新しい部品表に持ち込まれます。

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よくある失敗と回避策

部品表作成でつまずくパターンは、ある程度決まっています。代表的な3つと回避策を挙げます。

第一に、「形」から作り始めてしまう失敗です。ストラクチャ型かサマリ型かといった見た目の議論から入ると、土台となる品番体系が定まらないまま構築が進み、後で全面的な作り直しになります。必ず品番設計から着手してください。

第二に、採番ルールを決めずに走り出す失敗です。担当者ごとに番号の付け方が違うと、重複品番や幽霊品番が発生します。「誰が・どの単位で・どう採番するか」を最初に文書化しておくことが予防策になります。

第三に、移行時のクレンジングを軽視する失敗です。既存データの誤りを整えないまま新しい部品表に載せ替えると、問題ごと引き継いでしまいます。名寄せと検証に十分な工数を確保することが、結果的に最短の道になります。

よくある質問(FAQ)

Q. 部品表はExcelで作ってはいけないのですか。

A.小規模で品目数が少なく、設計変更も少ないうちは、ルールを整えたExcelでも十分に運用できます。ただし、品目数の増加や複数人での同時編集、版数管理が必要になってくると、Excelでは重複や更新漏れが起きやすくなります。その兆候が出てきたら、専用システムへの移行を検討するタイミングです。Excel運用の限界については、別記事で詳しく解説しています。

Q. 品番は意味あり品番と無意味連番のどちらがよいですか。

A.品目分類が安定していて、番号から種類が読めることの利点が大きいなら意味あり品番も有効です。ただし、品目数が多く分類が変わりやすい場合は、桁あふれや分類変更に強い無意味連番+属性管理が扱いやすくなります。迷う場合は、拡張性の高い無意味連番を土台にするのが無難です。

Q. 目的別BOMとは何ですか。作り分けが必要ですか。

A.設計・製造・調達・保守など、目的ごとに最適化した部品表を「目的別BOM」と呼びます。設計視点のE-BOMと製造視点のM-BOMでは構成の切り方が変わるため、大規模・多品種になるほど作り分けの必要性が高まります。ただし、それぞれを手作業で二重管理すると齟齬が生じやすいため、一つの正式データから目的別に展開できる仕組みが望ましいです。

まとめ

部品表の作り方は、「品番 → 階層 → 属性 → 移行」の順に、上流から設計するのが原則です。見た目の「形」から入るのではなく、まず部品を一意に識別する採番ルールを固め、その上に階層・属性を積み上げ、最後に既存データを名寄せして載せ替える、この順序を守るだけで、手戻りの大半は防げるようになります。

まずは自社の部品表がいま「どこに・どの状態で」存在しているかを棚卸しすることが、整った部品表づくりの第一歩になります。

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